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【ベルク YouTube】 大久保の少女
大久保の少女



日計り

私の生まれ故郷、
種子島にハブはいませんが、
ヒバカリという、
島の人たちによれば、
ハブより猛毒な毒蛇がいます。
浜辺の草むらに足を踏み入れてはいけない。
もしヒバカリに噛まれたら、
陽が沈むまでの、
その日ばかりの命というのが
名前の由来です。
「ヒバカリ」には,
「光」という
単語が含まれています。
「日を計る」とも、
「陽を狩る」とも読めます。
写真を暗示しています。

ただ、正直、写真とは何か、
と考えたことはありません。
特別なテーマがあって、
これらの写真を
撮った訳でもありません。
新宿ターミナルの地下街に
職場があるため、
毎日、少しでも、
カメラを持って地上に出ます。
その時は、
新たな一日の始まりという
気持ちがあるだけです。



大通りから裏道へ入ると、
アスファルトの模様まで変わります。
そんなことを思いながら、
歩いています。
障害物がある訳でもないのに、
歩きながら私はよくつまずきます。
余りにつまずくので、
呼びとめられていると
思うことにしました。
そんなに急いで、
どこへ行くの?と。
振り返れば、
電信柱の脇から小さな花が顔をだします。
見知らぬ少女と目があいます。
猫がうずくまっています。

その度に、
シャッターを押します。
ありきたりな言葉ですが、
どれも、一瞬の出来事です。
一枚一枚の写真が、
その結果としてあります。
出来事というほど大げさなものでもなく、
本当に、その少女や猫と、
軽く挨拶する感じです。
だからシャッターを押すのは、
だいたい一回限りです。
同じ人や物と二回も三回も挨拶をするのは
おかしいですし。
もちろん、
どの写真も、
狙った対象だけが
うつっているのではありません。

私自身、
狙っているのは、
実は、光なのかもしれない
と思うこともあります。
光が差し込む瞬間。
ふだんモグラのような生活をしているので、
それだけで驚きなのでしょうか。
もっと正直に言います。
狙うまでもなく、
カメラを向けた瞬間、
光がその対象を照らすのです。
私の方が狙われているみたいです。

少なくとも、
私が何か対象を狙っているという
感じはありません。
対象とは、
そもそも、一体
何の対象でしょうか?
好奇心?
記録?
それとも表現のため?
いえ、そんな思惑が働く余裕がない程、
ある意味、
それらは抜き差しならない
相手なのです。
自分と全く無縁ではない。
でも身近とは言いきれない。
その相手との目に見えない隔たりにこそ、
何かがあります。
そのモノ自体より、
一層無防備に。

それはむしろ
写真から私が教えられたことです。
気がつけば、
19年間、
新宿を撮りためていました。
でも、あくまでも、
その日ばかりの新宿です。
うまく言えませんが、
写真を見ていただければ幸いです。
(迫川尚子)

映像
1枚目の写真「大久保1丁目」(1990)
2枚目の写真「昭和館」(2002)
3枚目の写真「新宿御苑」(1994)
4枚目の写真「東口映画看板前」(1991)
5枚目の写真「ゴールデン街」(1990)
6枚目の写真「新宿3丁目」(1990)


写真 by 迫川尚子
音楽」 by 井野朋也

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by bergshinjuku | 2010-02-06 16:40 | ベルク YouTube
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