男子なら一度や二度はあったことのある「しょくしつ」。そうです。警官による職務質問のことですね。私なんかしょっちゅうです。何しろ新宿東口は「しょくしつ」のメッカ。ベルクはまさに東口ど真ん中。勤務中、休憩時間に食事に出たり、喫煙スポットでタバコ吸っていたりすると(やっと一息つける時間です)声かけられるのです。時には数人のおまわりさんに囲まれて。
基本的に、私は応じますね。協力的です。本当はただの事なかれ主義なのかも。面倒なことは避けたい。拒否するのが面倒というより、余りに納得いかなくて、その納得のいかなさをいちいち説明するのがもう面倒臭くて。見られて困るものはないし、鞄の中を見せろといわれればとりあえず見せますね。 納得いかないのは、まずねらい打ちみたいに私だけに声をかけてくること。しかも勤務中です。店の前でエプロンしてるのに引き止められたこともあります。さすがに呆れましたが。 職務質問というくらいですから、何か質問するのがスジでしょう。「失礼ですがどこへ行かれるのですか?」とか「何の目的で?」とか「どんな女性がタイプですか」とか…初対面だし、一応言葉使いにも気を使ってほしい。もちろん、私がどこで何しようとどんな女の人が好きだろうと人様の迷惑にならない限り私の勝手です。答える義務はない(しょくしつに法的強制力はありません、あくまでも任意です)が、スジさえ通っていればあまり邪険にもできませんね。ところが彼らはいきなり鞄の中を見せろとくる。礼儀も何もあったもんじゃない。いきなり犯罪者あつかいです(犯罪者に対して無礼でいいという訳じゃないですよ)。 私は18年、毎日ここにこうしています。が、新米のオマワリサンはどんどん入れかわりますからね。私の顔を知らない。別にあやしいものじゃないですよと素性を明かしても、取り合ってもくれない。そこに店があるから、来てもらえれば証人はいくらでもいると案内しようとしても、強硬な態度をくずさないのです。コミュニケーションが成り立たない。それが恐ろしい。 先日(10月10日)も、かのやうどんで朝食すませ、店にもどる途中オマワリサンに呼び止められました。その時はズボンのポケットの中を見せろと。私は業者さんとの待ち合わせがあって急いでいました。見せない訳じゃないが、近くに職場があるからそこまで一緒に来てもらえないかとお願いして止まらず行こうとすると、体当たりされ壁に叩きつけられたのです。新宿警察署の河野という警官に。やむを得ず中から携帯や店の鍵を取り出して見せましたが、さすがの私もその場で「暴力だ」と抗議しました。そうしたら河野さんは再度私に体当たりしました。何ですか今のはときくと、ぶつかっただけで暴力ではないというのを再現してみせたのだといいます。予告もなしに?ときくと、すみませんと初めて謝りましたが、ぶつかったことには一言もない。手を出さない以上法的には問題ないといいたいのでしょう。手は使わなくても故意にぶつかれば暴力ですよ。まあ何であれ、あちらからぶつかってきたんですから、謝ってほしい。スジは通してほしい。 が、かれらにしてみれば、どんな手段をとろうと、どんな状況にあろうと、鞄やポケットの中身さえ確かめられればもうこちらに用はないのです。こちらの気持ちはおさまらない。この気持ちどうしてくれるって。レイプされた感情にちょっと近い…のかな?店に戻ってから新宿警察署に電話しました。 最初、荒井という男が出ました。彼はまず私がどんな目にあったかということよりも、私がどんな身なりだったかということを尋ねました。仕事中ですからね。頭にはバンダナ巻いてます。バンダナ?それはまずい…犯罪者の可能性が高いと荒井さんはいうのです。失礼ですよね。ユニフォームなのに。休憩中でエプロンは外していました。上は黒Tシャツ一枚。ズボンのポケットは膨らんでませんでしたか?と荒井さんに聞かれ、携帯を入れてるぶんと答えると、だったら私も同じことをしたでしょうと。つまり、私はしょくしつ(&体当たり)されてもしかたない身なりをしていたそうなのです。それもレイプの検証にちょっと似ている。そんな身なりでいるからイケナイのだ。とやられた方が責められる。 だいたい職務質問ってランダムなものかと思っていました。スーツ姿の人の鞄も女性のバッグも開けさせるなら、いいかどうかはさておき、フェアではある。が、どうも見た目で(しかも、スーツ姿でない男子は犯罪者予備軍というきわめて大雑把な価値基準で)判断されているような気がしてならなかったのです。でも本当にそうだった。それじゃ肌が黒いというだけで差別するのとあまり変わらない…だから白人に比べて黒人の冤罪率が高いのですが…非常に短絡的な見方じゃないでしょうか。 私だって、ごくたまにスーツを着ることはあります。その瞬間、しょくしつは別世界の出来事になります。また普段スーツ姿でも、たまたま休暇でラフな恰好で新宿東口を歩く男の人もいるでしょう。そうしたらしょくしつにあう確率は一気に高まる。 犯罪を未然に防ぐというのがしょくしつの名目らしいですが、警察だって人の頭の中までは見れませんからね。せいぜい鞄の中を見るだけです。刃物のような「危険物」がないか調べる。刃物はそれ自体が危険というより扱い方を誤ると危険なものです(警察のような権力もそうですが)。だから刃物を見つけたってそれだけでは何の解決にもならない。それを取り上げて危険が回避されたと思うのは単なる気休めですね。いや、気休めが必ずしも悪い訳じゃないですよ。ただその程度のことで権力をふりかざしてほしくない。 荒井さんが言うには、私のような身なりをしている男子の方が(スーツ姿の男子より)刃物を所持している可能性が高いそうです。そりゃそうでしょう。私のような身なりをしている男子しか調べないのですから。それに私のような身なりって、自由業や飲食業の人に多い。私たち飲食業にとって刃物は商売道具です。職業差別にもつながりかねない。 しょくしつって、本来市民の協力によって成り立つものでしょう。ところが若い未熟な警官にその意識は希薄です。権力を傘にマニュアルに従って遂行するのみ。恐らくそのマニュアル自体にも(もしくは警察の指導にも)問題がある。 とにかくしょくしつの警官に一方的にあやしいと決めつけられた男子にとって、そこにあるのは協力というよりただ、あきらめです。人権の無条件な明け渡しといってもいい(法的に強制できないといいながら、物理的に強制する。犯罪防止のためとはいいながら、それ自体違法では?)。そりゃほんの一瞬、目をつぶって我慢すればすむのかも知れませんが、無理矢理やられた感はどうしたって残る。 今回、上司の北村という人に謝罪してもらい、とりあえず私は引き下がりましたが、しょくしつそのものへの納得のいかなさは、なくなるどころかますます大きくなるばかりでした。 女子の皆さん、ご存知でしたか?貴女の彼氏やお父さんや息子が、新宿東口で(とは限りませんが)ひょっとしたら今こんな目にあっているかも知れないのです。だとしたら、やられた!と地団駄踏んでいるか、疲れ果てているか、あやしいと疑われた自分の姿を恥じているか、なかったことにしているか、復讐を誓っているか、さもなければ徹底的に拒否して留置所に入れられているか、警察に協力的だった自分を懸命に励ましているか…わかりませんが、どこか納得のいかない思いでいるのではないでしょうか。しょくしつって、一体何なのでしょうか。
by bergshinjuku
| 2008-11-12 23:45
| 店長ブログ
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