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【新春特別インタビュー】 インディーズその可能性の中心
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ベルク店長 井野朋也

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インディーズその可能性の中心
<前編>



①密室ーNOといえない空気


 ー店長、まずは新年のご挨拶から。

「明けましておめでとうございます。昨年は、本当にありがとうございました。お蔭さまで、ベルクにとっても、私にとっても、最も激動の、最も充実した一年になりました。本年も引き続きよろしくお願い申し上げます」
 
ー年末に2回目の署名提出をさせていただいたとか。

「はい。昨年の12月30日に、営業継続を求める要請書を、2012名様分のご署名とともに、ルミネ社長宛に送らせていただきました」
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ーいいお返事があることを祈ります。さて、前回のインタビュー(最後の決め手はお客様)では、わかりにくい立ち退き問題を、店長からわかりにくく説明してもらいまして…(笑)

「いや、あれでだいぶ整理できたと思うのですが」

ー精一杯の整理だったと思います。まず、この問題を誰に向けて公表したか。お客様である、と。当事者であるお客様に、まずご意見が伺いたかった。その答が、応援ブログ営業継続を求める一万人署名にあらわれた。また、お客様に限らず、駅のあり方、弱者使い捨ての政策を問う意味もあった。さらに、個人店の危機という意味では、新宿や下北沢の再開発の問題にも通じる。

「大風呂敷広げないで下さい(笑)。公表といっても、元々、壁新聞や店のホームページを使ったお客様向けのものです。それをメディアでも取り上げて下さるようになって。私ども来るもの拒まずですから」

ーどんな形で報道されるかわからないという不安はありませんでしたか?

「お手柔らかに、とは申し上げております。皆様うちのお客様なので」

ー取材といっても、応援なんですね。

「新宿駅にこんなお店があった。今、こんなことが起きていると割と淡々と書いて下さるので、さりげなく店の宣伝にもなって、お蔭様で連日大忙しです」

ーこれだけこじれたのはなぜ?という声もあります。

「こじれたというより、ルミネさんとは法的なことを抜きにすれば、単にすれ違いなんですね。お互いに一方通行というか。そういえば、今、個人レベルでも、契約社員に限らず一方的な解雇ってあるでしょう?ちょっと待って?といいたいのにいえない空気。いったら空気読めないやつにされて。でも、いわなければ解雇…」
 
ーそうなんです。一つ念を押しておきたいのは、これはベルクだけの問題ではないということですね。現在、裁判でルミネさんと争っているテナントさんもあります。そちらの方がこじれているといえばいえる。ただ、立ち退きを迫られていることを公表したのは、今のところルミネエストの中では、ベルクの他に一店舗だけです。この二つのお店は、退店が人生のやり直しを意味する個人店であるという点、また経営が順調で出ていく理由がないという点で共通しています。

「昨日の自分を否定する。ルミネ社長の信条です。カッコイイっすよね。カリスマ社長にふさわしい。ただ、それを部下の方たちがお経のように何度も唱えると、何だかこちらまでそんな気になって…」

ーあぶないあぶない。密室で話を進めず、公表したのは正解だったと思います。ただ、決断までに三ヶ月近くの時間を要したとか。どうなるか読めませんでしたしね。実際、反応は様々でした。お客様から熱烈な支持をいただく一方、外野席からはルミネ側の言い分も聞かなければフェアでないという声もあります。前回のインタビューで、店長自身、ルミネさんが言い分をはっきりさせないのが、この問題のわかりにくさの最大の要因と指摘しています。それから、定期契約=追い出しという考えは短絡すぎるという意見もありますね。これは一部の報道への反応だと思いますが。

定期契約を認める法律が悪法とは、一概にはいえません。それで救われる人もいる(貸す側のリスクが減る)。ただ、人々の死活問題にかかわる法律であるにもかかわらず、意外と世間に浸透していない。その契約には、自動更新がありません。そのことを知らない個人店の店主(借家人)の無知につけこんで、定期が追い出しの道具に悪用されているケースも実際あるのです。一応、大家に説明義務はありますが、契約そのものが半ば儀式化している。日常において、契約に同意する場面って結構ありますが、いちいち全部に目を通さないでしょう?それでトラブルに発展することはまずないからです。さすがに営業権に関するような重大な契約は慎重になるべきですが、それでも店主がスルーしてしまうことって、ないではない。スルーする方が悪いという『自己責任』の論理は相変わらず根強いですけれど、契約ってそもそも、信頼関係を築くために結ぶものでしょう。でなければ、信頼関係が破壊された時の法的な切り札です。破壊するための道具ではない。うっかりサインしてしまった。後の祭と泣き寝入りする人たちが少なからずいるのは、どこか根本的に問題があるのです。私は、法的には、店舗の定期契約をせめて新規に限定しなかったのが混乱の原因だと思う。住居の場合、間違ってサインしたら路頭に迷いかねない。だから、定期への中途変更が認められません。定期契約を結べるのは新規のみなんですね。ところが店舗の場合、認められる。一つくらい店舗がなくなったって致命傷にならない大手系列店が基準だからでしょう。店舗だってうちのように個人店は住居と同じく、それ自体が生活の基盤なのに(もっとも、行政レベルでは、住居でも中途変更を認め、説明義務をなくそうとする動きがあるので要注意)」

 ーただ、ベルクはサインしなかった。ということは、命びろいしたはずです。にもかかわらず、今、出ていけといわれている。そこがまたわかりづらい。

「確かに、定期契約=必ずしも追い出しではないんです。自動更新がなくたって、再契約の条件を双方でつめればいい。まあ一等地では、立場が強い大家に有利な展開になるでしょうが、あくまでも原則論でいえば、契約を新たに結ぶにしても、変更するにしても、お互い誠意をもって納得いくまで交渉すればいい。少なくとも、私たちはその覚悟でした。どんな素晴らしい、心が傾いてしまうような条件が待っているか、と(笑)。ルミネさんのおっしゃるように、契約は個々で結ぶもの。個々の状況に応じて多様な結び方があるはずです。事実、ルミネさんもベルクの営業成績なら再契約はありうるというお考えのようでした。が、条件の提案はなかった。こちら
は今まで通り続けたいだけですから、具体的な提案を出すのは契約を変えたいルミネさんの方でしょう。が、それはなく、あったのは2年か3年という契約期間の選択肢だけでした」

 
ーで、新しい契約書にサインしろと?それは、ちょっと待って下さいですよね。

「店を次から次へと入れ替えるというルミネさんの経営方針に合致はするでしょうが、再契約の判断基準が大家のルミネさん側にしか見えないというのは非常に恐ろしい感じがしました。特にうちのような長期熟成型でやってきた店には」

ー黙っていうこと聞け、というようなもんですもんね。何の展望ももてない。

「うちはルミネさんに従属している訳ではありません。賃貸契約を結んでいるだけです。ルミネさんの経営方針に無条件で従う義務はない。もちろん、なるべくご協力したい気持ちに変わりはありませんが、それでも譲れるところと譲れないところがあります。いずれにせよ、もう少し具体的な交渉になっていれば、お客様を巻き込むこともなかったのですが」

ー要するに、交渉は決裂したと。

「いや、交渉にすらなっていない。契約を変更するには、新たな合意が必要です。その手続きを一切踏んでいません。だったら、今の契約でいくのが筋です。なのに、いきなり出ていけ!と。え?という感じです。合点だ!という訳にもいかず、すれ違いのままです」



②孤独ー店は声をあげにくい


ーなるほど。ベルク本のキャッチフレーズにもあるように、個人店の危機は日本の危機。時には声をあげることも大事です。そういう意味でも、ベルクは一つのサンプルになるのでは?

「立ち退きを迫られている店の店主や、定期契約にサインして追い出された店の店主からメールをいただいたりもします。ほら、本に私の携帯のアドレスがのせてあるから」

ーやっぱり、きますか!

「こちらは悔しい思いをしましたが頑張って下さいとか、名は明かせないけど励みになりますとか」

ー共に闘おうみたいな?

「そんなノリノリじゃないですよ。店やりながら立ち退きって、本当にきつい」

ーただでさえ忙しいのに。

「忙しいのはいいにしても、店主が一人で背負うには荷が重すぎて。ベルクでは、お客様が味方して下さるから無茶苦茶心強いですけど」

ーそうですよ。一人で悩むことはない。

「でもね。商売する立場からすると『立ち退き』って無茶苦茶いいにくいんです。お店で買う商品は、生活必需品とは限らないでしょ?記念品だったり、お土産だったり。『立ち退き』という言葉が目についたら、縁起悪いじゃないですか」

ーなるほど。客にしてみれば、わざわざそこで買うこともないか、と。

「業者さんだって、あそこヤバそうだと引いちゃう。スタッフだって不安だろうし、新しい人材も集まりにくくなる。店主は何もいえず孤独なんです。立ち退かせる方はてこずると思うかも知れませんが、店主はそれ以上に追い詰められる。個人店って、仕事も生活も夢も希望もその場所にありますから、そこを去るのってもう根こそぎ奪われる感じなんです。そのやりきれなさったら、なかなかわかってもらえないかも知れませんが、大家さんにどんな事情があるにせよ、誠意ある対応をしていただかないと、単なるイジメになりかねない」

ーそれにしても、ベルクでは全く逆のことが起きていますよね。お客様の応援はあるわ、職人さんたちとの結束は固まるわ、スタッフだって…

「立ち退きのことを知って、応援で働きに来てくれるアルバイトもいます」

ーなぜ?なぜベルクは「立ち退き」という言葉が似合ってしまうのですか?(笑)

「似合っちゃいないけど、イメージより実質重視のスタンド式カフェだし、やたら活気があるので自然に溶け込んでしまうのでしょう(笑)」

ー立ち退きで苦しめられている店主たちとは情報交換とかするんですか?

「します。耳寄りだったのは、例えば、JR系列の駅ビルはどこも頻繁に呼び出しがあるんだなぁとか」
 
ー密室に。やっぱり、出ていけ、と?

「いや、わりと些細なことでちょこちょこ呼び出される。お客様にレシートを必ずお渡しして、とか」

ーそんなことでわざわざ?といったら語弊があるかも知れませんが、店のオーナーが部屋に呼び出されるようなことですか?

「と思えば、新しい契約書にサインして、とかね」

ー油断できない。

「これも他人ごとに思えなかったのが、やはりJR系列の駅ビルですが、クレジットの控えの受渡し方を間違えると、1時間半の講習を受けさせられるそうです。スタッフに1時間半も抜けられたら現場は大変ですよ。しかも、10年以上のベテラン店長がレジの打ち方から習わされる。罰ゲームじゃないんだから。そりゃプロである以上、ミスはあってはならない。でも、ミスした後、どうフォローするかなんですね。接客で重要なのは。ミスの度に罰ゲームじゃ、やる気なくなります。その店長は、ミスする度にパニック状態に陥るようになってしまったとか。レジならまだ人命にかかわりませんが、これが電車の運転手だったらと思うと」

ーいやーぞっとします。でも、自分たちだけじゃないんだと思えば、そうした情報交換も多少救いになりますね。

「ええ。駅ビルの個人店なんて、ほとんど横のつながりないですから」


<つづく>
by bergshinjuku | 2009-01-12 01:10
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