1988 田島征三 フリー・ペインティング 上野・水上音楽堂
ベルク以前の貴重な映像を…。 1987年に出た広瀬隆さんの『危険な話』をきっかけに、反原発運動が全国的に盛り上がり、私たちもちょっとですがかかわりました。単に「放射能は恐い!」ではなく、原発や核爆弾から発生する(要するに、自然界のものではない)放射能は、私たち生き物の身体がまるで無防備であるため、特に細胞分裂の活発な赤ちゃんや若者が最も影響を受けやすく、白血病や癌の原因になること、しかもそんな危険なものが無味無臭であること、また核技術はその危険性ゆえ、一部の権力者やメーカーに独占され、秘密主義をはびこらせること(ちっとも民主的ではない)、危険にモロにさらされる地元住民の人間関係は、絶え間ない不安と推進側のばらまくお金によってズタズタに分断されること、などが少しずつ見えてきました。もちろん、私たちは原発推進に「待った」をかけたのですが、そうした問題をまず多くの人たちと共有したかったのです。 一時期(ベルクをやる前ですが)、積極的に集会の企画に参加したり、ビラ作りしたりしましたね。迫川は、原子力計画の研究者でありながら反(脱)原発に転じた科学者の高木仁三郎さんにインタビューに行って、「私にしか答えられない質問をして」とピシャリとやられ、震え上がったそうです(本を読む限り、優しそうな方だっただけ に、なおさら?)。ただそのセリフ、迫川は最近、店のスタッフにそのまま使っていますが…(こわっ)。私も、画家の田島征三さんに、ステージ上でロックバンドの演奏に合わせ、大きなキャンバスに絵を描いてもらうようお願いしたところ、突然怒鳴られました。こわかったですよ。確かに、「反原発」の一言で征三さんはすぐのる、と安易に考えていたところがあります。そうしたら、「こっちは命がけで描いているんだぞ!」と。今思えば、その時の田島さんが48歳。ちょうど今の私と同じくらい(ちょっと若い)です。私たちは20代でした。いやー、今のバイトスタッフから見たら、私たちも恐い存在なのでしょうか。でも、結局、田島さんはその話を引き受けて下さいました。それからの長〜いお付き合いです、田島さんとは。ベルクの椅子とテーブルは息子の燃さんの作品ですし。それにしても、原発は今、CO2を出さないから「エコ」とかいってまた正当化されようとしていますが(温暖化とCO2の因果関係すらまだよくわかっていない)、そんな単純な話でいいのでしょうか? ●CO2は諸悪の根源なのか?ベルク通信2007年3月号 http://www.berg.jp/tsu-shin/bergt155.htm (店長) ちょうど原発問題に関心を持ち始め、貸しビデオ屋でメルトダウンの恐怖を描いた映画『チャイナ・シンドローム』(ジェーン・フォンダ、ジャック・レモン主演)を借りて見た直後に爆発したんですね。チェルノブイリ原発が。1986年の4月。声になりませんでした(この映画の公開直後、1979年3月にはスリーマイル島の事故が起きています)。よく、便利な生活にリスクはつきものと言われますが、その通りなんだけれど、そのリスクの大きさ(取り返しのつかなさ)を考える必要もあるんじゃないでしょうか。田島征三さんのなつかしい写真が出てきました〜。1988年。まさに、私が写真に目覚めた年。征三さんが描いている横で、3人の白衣の女の子が待機してるでしょ。これ、決まりだったんです。女の子(美大系の)3人、絵の助手をつけるのが。実は、私も1日だけやらせていただいたことあります。この日ではないんですが、征三さんは小室等さんとお二人で「はたけうたコンサート」というのを当時全国ツアーでされてまして、やっぱりステージで歌に合わせて絵を描いてらっしゃったんですね。そちらにどう?とお声がかかりまして。助手たちが征三さんの指示に従って泥絵の具で色をつくっていくんです。打ち合わせなし、助手どうしも初対面で、いきなり始まって。私はこっち系の色担当とか、もうその場で決めて。あがってる暇もないくらい必死でした。面白かった〜。店長が、チャック・ベリーのバックをつとめたEストリート・バンドみたいと言ってますが、ベリーのコンサートもぶっつけ本番で、直前に会場に着いたベリーにスプリングスティーンが曲順を尋ねたら、一言「全曲、チャック・ベリーの曲」と答えたんですよね。でも、イントロが鳴れば、とりあえずどうにかなりそう?私たちの方が、インプロヴィゼイション(即興)性、高い?チェルノブイリと言えば、本橋成一さんの『無限抱擁』が、ベルクの壁を使った写真展の第一回目でした。どうせやるなら、オリジナル・プリントで、と本橋さんの方からおっしゃっていただいて。注目集めましたね〜。それから続々と著名な写真家が名のりをあげて下さいました。ところで、本橋さんの事務所に写真を取りにうかがった時、テレビの画像からただならぬ雰囲気が漂っていました。ニュースで地下鉄サリン事件を報じていたのです。1995年の3月でした。 (迫川) 1988年10月23日、東京上野の水上音楽堂で「脱原発法」を呼びかけるイベントが開かれ、会場の内外におよそ3500人の人が集まった。現地からの歯切れのよいアピールとあいまって、ランキン・タクシーや造反有理などの音楽勢が好演、われらSOSO(リード・ヴォーカル/生田卍、リード・ギター/愛染恭介)も下北につづいて30分近く熱のこもった演奏を展開し、集会のトリをつとめた。またステージのかたわらには200号のキャンバスがたてかけられ、画家の田島征三さんが集会と同時進行の形でフリーペインティングをおこなった。イメージがさらに別のイメージを呼び起こすような、はじめのモチーフが跡形もなく消えてしまう絵の変貌ぶりに観衆は目を瞠った。田島さんの参加もあって、10.23のイベントは、これまでの反原発運動自体のイメージをも塗り変えるものになった。人々が色々な形で、より自由な発想で運動にかかわる勇気のようなものを持てたのが最大の成果だろう。田島征三……その名は知らずとも、『しばてん』『ふきまんぶく』『やぎのしずか』といった絵本で一度でもその絵を目にしたものなら、「あああの」と叫ばずにはいられない筈だ。そのなりふり構わぬノリのよさは、まるで絵のロックンロールである。百姓一揆、東京大空襲、そしてフィリピンネグロス島の飢餓…。作品の内容は今日まで一貫して社会的なものが多い。勿論言うまでもなく、私たちがいつも感嘆させられるのは、そうした問題を扱っているからというより、田島さんがそうした問題に表現者として全身全霊をかけて取り組んでいるからだ。田島さん自身が言われるように、どんなに切実としたテーマであっても、いやそういうテーマであるからこそ、それを無理やり図式化したり、作品の中だけで安易に解決してみせたりするのでは、かえって「ばかげています」し、せいぜいお茶を濁す程度のことにしかならない。今回も、「脱原発」という現実的にきわめて緊迫したテーマとはりあうだけのパワーと表現力を持つアーティストとしてお願いしたわけだが、実際に田島さんの口から「やるからには命がけ」という言葉を耳にした時は、あらためて大変なことをお願いしてしまったと、正直身の縮まる思いもしたのである。当日、描かれた作品は、89年3月東京都美術館で催される人人(ひとひと)展に出展される予定だ。最後に、その田島さんが参加している人人展という画家の集まりについて、少し触れたい。人人とは、文字通り人を縦でなく横に並べるという意味で、中村正義、山下菊二、丸木位里、丸木俊といった錚々たるメンバーで形成されてきた。この人人展のミニコミ誌の扉にいつも書かれている文章が、田島さんたちのアートに対する姿勢を端的に語っていると思われるので、ここに紹介したい。 人を縦でなく横に並べて人人と称してきた。 権威にひれふし時代の証人であることを 放棄した人々を私たちは画家と呼ばない。 権力の保護で得た地位や富は作品に なんの力もあたえはしない。 彼等のどんな言葉が 私たちの心を動かすというのか。 画家は苦悩し、傷つき、憤り、疑い、 矛盾を画面に定着してきた。 私たちは十四人の画家が触れている時代を 十四通りの思考と造形によって探って ゆこうとする集団である。 (当時、私たちが集会向けに作成したビラより) 写真 by 迫川尚子 音楽 by 井野朋也 ![]()
by bergshinjuku
| 2010-03-12 00:41
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